『ファウストVol.7』

前巻から二年半も経っているので、全く期待していなかったのだが、意外と面白かった。今回は特集が五つもある。最初が、佐藤友哉特集だが、そもそも、あまり読んだことないし、関心もない。

次が東浩紀特集だが、仏語版、英語版、韓国版が出たという話で、国によって序文の内容を変えてあり、それなりに興味深い。

メインの特集が中国なのだが、郭敬明のインタビューと福島亮大の中国の文化事情の紹介は良かった。しかし、それ以外の編集長が登場する対談は今一。何故かというと、要するに言っていることは、コンテンツの分野でもこのままでは日本は負ける系の話であり、確かにそうなのかもしれないが、別に『ファウスト』誌上で長々と論じることでもないだろう。実際、ビジネスのほとんどあらゆる分野において、中国だけでなくグローバライゼーションにどう対応するか、あるいは対応できなければ、やっていけないぞという話であるが、自分もその潮流に乗っかってやっているとしても、ビジネス的な話を小説雑誌でやる必要もないだろう。個人的には、これはこれで興味深い話ではあるが、ある意味、飽き飽きしている面もあるため、余所でやって貰いたい話である。翻訳の小説が掲載されていたが、確かに出来は良いが、ライトノベルとはちょっと違う感じで、しかも、意外と社会派的なのには驚いた。

さらに竜騎士07のインタビューがあるが、『うみねこ』に関する物で、そもそも、『うみねこ』をやっていないので、よく分からなかった。

最後が、何故か、『幻影城』に関する特集。既に同人誌が出ているが、それを拡充して、講談社から出版するようである。これも興味深いが、『メフィスト』誌で良かったのではないかとも思う。

特集以外の小説では、筒井康隆ライトノベルに挑戦ということだが、ライトノベルというよりは、いつも書いているようなエロ有りのSFのようだ。結構、面白いが、前半のみなので、この後、どうなるか予想が付かない。他には、銀メガネの「コンバージョン・ブルー」の第三話が載っているが、良くできているけど、第一、二話の後日譚的なもので、それ以上のことはないのが残念である。他は、上遠野浩平のは、『電撃文庫マガジン』に載っているのとほとんど同じような感じだが、安心して読める。


時間を掛けたので、特集はそこそこ面白かったが、肝心の小説は、今までと大して変わらないし、もう少し、梃子入れした方が良いのではないだろうか。